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2007年4月 9日 (月)

「ブラウンさんと呼ばれたい」

騙しだましに使ってきたパソコンがついにいかれてしまい、最新のiMacに買い替えました。メモリが128MBから1GBになったら、インターネットが速い速い!

↓年初めに書店で平積みになっていて目に付いた。とっくに文庫になっていたらしいが知らなかった。

『俺がJBだ! ジェームズ・ブラウン自叙伝』
ジェームズ・ブラウン/ブルース・タッカー著
山形浩生/渡辺佐智江/クイッグリー裕子訳

(1993年邦訳 文春文庫)

Fi2621441_1e いやあ、極貧だった子供の頃の話はアウトロー小説でも読んでるみたいだ。母親は4歳のときに家を出ていってしまい、テレピン油の原料を採取する仕事の父親と人里離れた松林を点々としながら、いつもひとりぼっちで放っておかれていた幼いジェームズ・ジョー・ブラウン・ジュニアの遊び相手は、アリジゴクだったって…! んで、JBはそのような境遇のもとで、自分だけの心のあり方が形成されたと語る。

「このあとどんなことが身に降りかかろうと、ーー投獄、個人的問題、政府の嫌がらせーー自分に頼りきれる才覚が身についたんだ。」 私もよくアリジゴクやツチグモで遊んだなあ。親しみを覚えるとともに、妙に印象に残る一文でした。政府の嫌がらせというのは、脱税で追い回された件も含まれると思うが、「俺は貧乏な黒人という理由でちゃんと教育を受けさせてもらえなかったのだから、俺に非はない」というようなことを語っていまして、不遇を自力で乗り越え成り上がったJBだからこそ、むしろ清々しさを覚えました(笑)。

JBの音楽は、アメリカの黒人音楽の伝統に実はとても忠実であり、目指したところは、聴衆を熱狂させ、昇天させることがすべてだったと思う。本書でも、客を「皆殺しした」という表現が何度も出てくる。巡業先で共演するミュージシャンはボクシングの対戦相手みたいなもの。勝ち残るためには、激しいダンスも、マントショーなどによるショーアップも、歌や演奏と同じくらいに重要と考えていたのではないか。
そう思えてしまうのは、JB自身が純粋に音楽(歌)の才能を研くためにどれだけ努力したかがほとんど書かれていないからでもあります。天才たる証拠。努力を努力と思っていないのが天才だ。ゴスペルで音楽に目覚め、若い頃はブルースはあまり好きではなく、一番のアイドルはルイ・ジョーダンだったというのも、生涯一環していたライブでの音楽スタイルを思えば腑に落ちる。

しかし、エンターテインメントというのは難しいですね。並の才能の者だと、JBのようなファンクバンドを目指したはずが、気付けばコミックバンドとして客の受けを狙っていた、というのはありがち(笑)。そういう心意気は、嫌いではないのだけど…。

ライブ音楽に接する機会を結果的に聴衆から奪うことになったディスコ音楽や、巨大企業ポリドールが押し進めた音楽産業のグルーバル化(アク抜き)に対する批判は強烈だ。

エルヴィス・プレスリーは、前にテレビで見たインタビューでも語っていたが、本当にソウルメイトともいうべき間柄であったらしい。事務所の先輩リトル・リチャードが、かませ犬のような扱いなのは少し気の毒かも(笑)。アレサとは一時恋仲だったような表現があったり、ミック・ジャガーはJBたちと対バンしてからライブパフォーマンスが180度変わったなど、たくさんのミュージシャンの名前も登場するので楽しいです。

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この本にぴったりなのは、このアルバムでしょうか。
James Brown『Say It Live And Loud Live In Dallas 08.26.68』

Fi2621441_2e_2 私も今年になってから買って聴いてみたのですが、いやーすごいすごい! さすがのJBも終わりのほうは声が嗄れ、酸欠を起こしそうなくらいの勢いのライブ。いちばん音楽活動的にもハードな時期だったのかな。
バラードにおける歌声ものびやかで素晴らしいのですが、くるくる変わるJBの指揮に瞬時で対応している(らしい)バンドの演奏もすげーわ! これでは一瞬たりとも気が抜けない。
また特に13分近くに及ぶ「Cold Sweat」から「There Was A Time」になだれ込むあたりの、手足フル稼働で16を刻み続けるドラムスは圧巻。当時はテナーサックス担当だったメイシオも機関銃みたいだし。録音はバランス的に決していいとはいえないけど、生の音楽のライブ盤の場合はむしろそこから名盤が生まれたりしますからね。

キング牧師やケネディの暗殺から間もない時期で、アメリカ社会もJBの音楽も何か大きな流れに巻き込まれるようにして変化していったちょうどその時代というのが、一層の臨場感を与えます。

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コメント

私もこの本読みましたけど、圧巻でした。JBの凄さを引き出した著者の熱意も感心しました。終わりの方に、初めてJBと会う場面が書いてあり、彼は白人黒人関係なしに、著者の人間性を見極めインタヴューを認めたとか。バンドのメンバーにも、細かい指示はしても若かろうが何だろうが、実力とハートの有るヤツを登用する、その姿勢と選ぶセンスがマイルス並みではないでしょうか?私も最近60年代後半から70年代初めって改めて凄いなあと思います。

k.m.joeさん同じことを思いました。JBは白人に搾取されてきた黒人の怒りの代弁者のように誤解されることもありますが、本人は自分を慕ってくるミュージシャンは黒人白人関係なく、かわいがっていたようですね。人種や育ちに対する偏見に、自分が苦労してきたためでしょうか。あと、JB自身もかなりミーハーな人で、人懐っこく、案外、可愛い性格なんじゃないかと思ってしまいました(笑)

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