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2007年4月15日 (日)

犯罪者のドーナツ屋と不動産屋の娼婦

ノンフィクション作家から転じた新進作家による、2006年MWA賞最優秀長編賞受賞作。

『市民ヴィンス』ジェス・ウォルター著/田村義進訳
(ハヤカワ文庫 2006年邦訳)

Fi2621445_1e ワシントン州の地方都市スポーケン。ドーナツ店の雇われ店長であるヴィンス・キャムデンは、裏ではカード偽造と麻薬の密売に手を染めている。実は彼にはもう一つ、誰にも打ち明けることのできない秘密があった…。

本の真ん中くらいまでは、大したことないと思っていた。しかし、これがなかなかどうして! しゃれたユーモアと、新鮮な味わいのある小説だったのだ。
ヴィンスときたら、傍から見たらまったくつかみ所のない男。思慮深いんだか浅いんだか、臆病なんだか度胸あるんだか、そして何事も風任せのような…。危なっかしいことはこの上ない。でもなぜかセクシーだ。続編をリクエストしたいくらい(笑)。

↓以下ネタばれ。

時は1980年。民主党ジミー・カーターと共和党ロナルド・レーガンの大統領選まっただ中、投票日直前の1週間が、この小説の舞台だ。ピカレスク風小説なのに、カーターとレーガンも実際に小説の中に登場してくるので(ここらへんは元ノンフィクション作家らしいかも)いったいワシントン州の田舎に住む小悪党ヴィンスとどう関係してくるのか…。しかし、これが後でぴりりと効いてくる。

刑務所に出たり入ったりの人生を歩んできたヴィンスは、この選挙で生まれて初めて有権者登録カードというものを手にする。それをきっかけにヴィンスの中の何かが変わり始めるのだ。折から彼は命を狙われるという一大ピンチに陥っていたのだが、そんな中でもテレビで選挙演説が始まると真剣に見入ってしまうのである。周りの人間にはまったく理解できないことに…(笑)。
この場面は後から思い出しても本当に可笑しい。世を拗ね斜めに構えて生きてきたような男が、誰に一票を投じるかでいきなり真剣になっちゃうものだから本当に面白い。

訳者あとがきにも書かれていたが、ほかの登場人物もそれぞれ味があり、キャラの立ち具合がエルモア・レナードのそれに似ていて、レナードの小説がよく映画化されるようにこれも映画になったらまた面白いかもと思った。コーエン兄弟、または「ブロークンフラワーズ」のタッチでジム・ジャームッシュとか。タランティーノでもいい。

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