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2007年3月15日 (木)

変わりゆくものと変わらぬもの。

スウェーデン南部の田舎町イースタを舞台にした、バツイチ、すでに独り立ちした娘一人、たまにボケ始めた父親の面倒も見なければならないクルト・ヴァランダー警部のシリーズ第5弾。

『目くらましの道』ヘニング・マンケル著/柳沢由美子訳
(創元推理文庫 2007年邦訳)

Fi2621435_1e_2 警部は恋人と過ごす夏の休暇が待ち遠しく、同僚たちはサッカーW杯(1994年のアメリカ)での自国チームの活躍に気もそぞろの最中。菜の花畑に不審人物がいるとの通報を受けて警部自らが出向くと、そこには肌の色の濃い少女がいて、声をかけた警部の目前でガソリンをかぶって焼身自殺を図る。また、そのショックから立ち直れないでいるうちに、かねてから良くない噂のあった元法務大臣が、隠居生活を送る家の近くで頭皮を剥ぎ取られた殺傷死体となって発見される…。

相変わらず読ませるぅー、面白い! 連続猟奇殺人とそれに振り回される警察というのは、米国のミステリーではもうありきたりなんだが、舞台がスウェーデンなのでひと味違う。ヴァランダーたちはこのような残忍な事件に、まだまったく不慣れなのだ。何を疑えばいいのか、いえ、無意識のうちに疑いは的中しつつあるようなのだが、それをあえて見ない、信じないようにすることで事件解決は遅れる。一方で読者は、あちこちに散りばめられた曖昧なヒントによって、話の次なる展開予想が裏切られまくり(笑)。

このシリーズは、いつも最後の追い込みが息尽かせない展開なのだが、今回は事件が解決してもまだかなりのページ数が残っている。眠いのを我慢して読み進めたら、途端にその眠気はどこへやら……もう号泣。
現代社会の病んだ部分を描きながら、単に刺激的なストーリーとはならず、主人公がまっとうな警官としての思慮深さや人情味を留めていることに好感が持てる。著者マンケル自身、正義感の強い人かもしれない。

このシリーズ、スウェーデンではドラマ化もされているという。マンケルはこの5作目で英国推理作家協会のゴールドダガー賞も受賞。もはや北欧を代表する作家の一人? ところで、クルトというと、真っ先にユルゲンスが思い浮かぶので、ヴァランダー警部もいつもそんな容貌を想像しつつ読んでいる。

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