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2007年2月25日 (日)

食うか食われるか

昨年話題だった海外ミステリー。友人が貸してくれたので読みました。ポケミスでは珍しいヒットらしく、書店では新たに紙カバーの化粧を施されて平積みされていたのを見かけました。

『あなたに不利な証拠として』ローリー・リン・ドラモンド著/駒月雅子訳
(ハヤカワ・ミステリ 2006年邦訳)

Fi2621430_1e キャサリン、リズ、モナ、キャシー、サラ…女性警官たち話。 ふだんは避けがちな短編小説なのだが、これは短編の並びがうまくて、1編ごとに面白くなっていくのが良かった。それでも、これが昨年のベストミステリーとして売れちゃう理由が??? 自分はミステリー小説好きを自称してるけど、謎解き重視のものはそれほど興味がなく、欠陥のある人間ばかりが登場し、さらに善い人悪い人がはっきりしない、下手したら事件すら解決したんだかしなかったのか分からないタイプのものが好きで、なかでも警察小説には目がない。つまり、この短編集の世界にはけっこうなじみがあるつもり。んで、あえて、これが特別に売れた理由が分からない…。

死体と対面したときの思いや、銃を身に着けていることの違和感など、かつては警官だった著者らしい生々しい表現が個性ではあると思し、真面目に“人間を描いている”ところには好感をもったが、女性警官の話は他にもたくさんあるわけだしね。特にどこか際立って面白いとか、新鮮だとかは感じなかったわけだが。

もし、いつもは男が主人公の小説しか読まない男性が、この短編集を読んで「面白い!」と絶賛していたら、女性は眉に唾つけて聞いたほうがいいかもしれない。
以前、ある児童文学評論家が「女の子は少年漫画も読むが、少女漫画を読む男の子はほとんどいない」という趣旨のことを言っていた。だから、共通の推薦図書を挙げるときも、男の子が主人公のものにしておけば無難だと(今はどうなっているかは知らない)。女性にとっては主人公が異性である小説なんて当たり前で、異性であろうと、人間としてすんなり共感できるものには共感して楽しめるのだが、男性の中にはそういうのに不慣れな人がたくさんいる。と推測している。それゆえに新鮮だったかもしれないのよ、この小説は。

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『復讐』ティム・グリーン著/村上和久訳
(二見文庫 2006年邦訳)

Fi2621430_2e アメリカンフットボールのプロ選手から弁護士に転身し、テレビ番組のホストやコメンテーターとして活躍しながら、ミステリー小説家としてもすでに中堅どころという著者の初翻訳本。

現代版『モンテ・クリスト伯』を目指して書かれたミステリーなので、あらすじは面白くないはずがない。でも、あまり巧みな小説ではないような…。そこはかとなくチープ。

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コメント

ぼくも「あなたに不利な証拠として」を絶賛しました(笑)それでここでの指摘は興味深い。ひとつはたしかにぼくも最近の警察小説をまったく読んでいない。この作品が多くの警察小説の水準に対してどうなのかは不明。もっと重要なのは”異性小説”の指摘だね。これはヒメヒカゲさんの言うとおりで、マイッタという感じ。でもぼくも含め大抵の男はそんなもんよ。つまり女がぜんぜん分かってないから、女におどろいちゃう。そのこと自体が小説の問題以上の(以前の?)問題よね。けれども異性にたいするリアル認識が、いいものかどうかは議論の余地なきことではないよね。誤解や幻想性や理想化が担ってきたものもあると思う。つまりセクハラの問題よね。

>warmgunさんこの本が男性に“異性小説”と意識して読まれたかどうかは、私自身が女なので、不明なのです。あくまで推測で・・・。ちょっと批判的な言い方になってしまいましたが、この本が男性に指示されること自体は、喜ばしいことだと思います。女からすると、この本に登場する主人公たちは、仕事においては特に女であることを意識していないところがリアルであり、共感できます。だから、この本を絶賛する男性はいいんです。私などがガッカリしてしまうのは、渡辺なんとかが書く女性への偏見丸出しの安っぽい官能小説を絶賛してしまう女性(私の同性)の存在のほうです(笑)。

この小説を読んで1年もたってないが、細部は忘れつつあるが(なにせ年なんで:笑)ヒメヒカゲさんと感じ方がちがう所がある。ぼくは最初の2章くらいにいちばん感動したんだ。最後にわりと長めのこの短編集の中核みたいな章があったと思うが、それはそんなに好きじゃなかった。つまり、まさに、女が生理的に感じている感じそのもの、みたいなのが新鮮だった(たとえば拳銃を常時携帯することの感じ、その肌触りみたいな)けれどもこのぼくの感想はヒメヒカゲさんの論旨を強化するかもしれない。はなし変わるが新潮文庫で出ていた「エリー・クラインの収穫」は読んでる?これも筋はどうでもよく、女警官の生理が好きだった(書いているのは男だが)ヒメヒカゲさんイチオシの女警官もの(男でもいい!)はなんですか?

女性になりたい男性の方が、男性になりたい女性の数より多いんじゃないかと思うんですが、それは「タブー」を超える“反動”かも知れないと思います。女性にとって、仮想的にでも男性になる事は自然に出来てると思います。男が女の世界に入るのは凄く勇気が要ります。でも、今の世代は違うかも知れないですね。私の世代の青春時代は「女性」は想像する必要が有ったんですが、今の若者は交流する年齢が早いですから抵抗がない感じもします。

>warmgunさん文学として読むと最初のほう、ミステリー(サスペンス)好きが読むと後半が印象に残るかもしれませんね。エリー・クラインの収穫は読んでません。メモっておきます。イチオシの女警官は・・・最近ではイアン・ランキンのリーバス刑事シリーズに登場するシボーン刑事なんですが、キャラクターがお気に入りです。このブログの中でも、ジル・マゴーン、ヴァル・マクダーミド、乃南アサ、ナンシー・テイラー・ローゼンバーグは女性警官ものです。意識して選んで読むわけではないのですが、けっこう多いですね。刑事→アル中→薬中→売春婦→私立探偵という人生を歩んだ強者キャラクターもいます。リンダ・ラ・プラントという作家のものですが、この人は「第一容疑者」というテレビシリーズの脚本も書いていて、これに登場する女性警部もまた強烈です。

>k.m.joeさんプライドというものにあまりこだわらなければ、女のほうが楽という考え方はあると思います。まわりの期待も男ほどじゃないですしね。男より自分らしい生き方ができるかも。男性が女性の世界に入りにくいというのは、なぜか理解できるんですよ。でも、実際には、男の世界と女の世界では、世間で言われているほどの違いはなく個人の違いのような気もするんですよね。一般に「男らしさ」とされる美点は、人間一般に美点だったりしますしね。

本屋で「あなたに不利な証拠として」が平積みされているのを見たらば、カバーも“都会の夜”の写真みたいに変わっていて、赤い帯で「2007このミス1位!」とハデに施されていたね。私じゃ想像できない程に多量に海外ミステリーをこなすヒカさんにとっては、いつか読んだ何かと語り口が似ているモノだったワケだね。朝日新聞か何かのブックレビュー欄(かな?)で褒めちぎってた作家…誰だったけ?そう確かに男の作家だったなー

>へべあもさん先に読ませてもらいました。気になっていた本だったのでいずれ読むつもりでした。ありがとー。ミステリーはそんなにたくさん読んでいるわけではないけど、死体の場面などは私はかなり免疫できちゃってるようです。でも、そういうの、だめな人はだめよね。あもさんは、前にNHKでやっていたヘレン・ミレン主演の「第一容疑者」シリーズ見た?あれは本当に面白いドラマだったよ。

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