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2007年2月 1日 (木)

ポチの品格

テレビドラマ「ハケンの品格」は、多分にキナ臭いと言いつつ、
それゆえに気になるってのもあって、気付けば毎週見てしまっている。

タイトルずばり、これは派遣に派遣としての生き方を諭すドラマだ。
複数の派遣会社・資格取得学校が番組スポンサーに加わっていて、
これまでのところ、派遣の負の部分は、派遣社員個人の努力不足ってことで
すべて片付けられている。いや恐ろしい。
バランスを取るように描かれる派遣と正社員の対立も子供の喧嘩を見ているよう。
もはや、正社員男性と派遣女性の恋の行方が気になる人のみが楽しめる
ドラマにすぎなくなっている。
それと、企業にとっての都合のいい派遣=忠犬ポチのような従順さを、
残酷にも笑いながら楽しめてしまう人向け。

このドラマで、最初に連想したのが『アンクル・トムの小屋』だった。
誰もが知っている児童書(少なくとも私が子供の頃は)だが、
本国アメリカでは、南部での黒人奴隷の実状を北部の人たちに気付かせ、
南北戦争の導火線になった小説だ。
しかし、のちにブラック・ナショナリズムが台頭してくると、
「あいつはアンクル・トムだ」というように、アンクル・トムといえば黒人たちの間では、
白人に媚を売ったりして卑屈な態度を取る同胞への蔑称として使われる。
最近でもライス国務長官が“アンクル・トムの娘”などと揶揄されている。

派遣にもいろいろな派遣があり、制度として良い面はあるのかもしれない。
派遣のすべてが不当な扱いを受けていると言い切る気もないのだが、
社員になりたくてもなれず派遣をやっている人の急増、
実務経験がまったくない人でも派遣になれてしまうという現状は、
一つの被差別階層を生み出していると考えて間違いない。
派遣からの正社員登用がごく当たり前になれば、また違った先が見えてくるだろうが、
今の段階では大勢の派遣に頼って収益を上げている大企業が、世間の非難を避けるために、
そういう制度を形だけ設けているにすぎないのではないかと穿ちたくなる。

『アンクル・トムの小屋』は読む人の意識によって毒にも薬にもなった例かと思うが、
「ハケンの品格」に、それと同じ作用を期待しても無駄のようだ。
いくらコメディ要素でごまかしても、ストーリーは八方美人なご機嫌取りに
苦心しているのはみえみえで、うまくまとめられず矛盾だらけ。
回を追うごとに、スーパー派遣というありえない設定を利用した、ドラマ作りの
杜撰さばかりが目立ってきて、もうあとは最終回だけを見て、
このドラマがいかに空疎な内容だったかを確認すれば十分だと思う。

ありえない設定と言えば、主人公の派遣社員が時給3000円だか3500円だかを
もらっているというので注目を集めているようだが、
それは派遣先の企業が派遣会社に払っている金額で、
主人公の収入は、仲介料を差し引かれて、せいぜい時給2000円くらいと思われる。
主人公は“ポチの品格”を備えた派遣のお手本のような人物なので、
「私が実際もらっているのは2000円です!」などと
かなり多めに中間搾取している派遣会社に迷惑がかかりそうな弁明をしないのは当然なのだ。

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