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2007年1月14日 (日)

償いか献身か

反省して出した答が、イラクへの2万人以上の増派、バグダッド周辺の治安が改善されれば年内撤退も可能って、まるで破滅型ギャンブラーの発想だよねえ。共和党内部からですらベトナム戦争以来の失態との声が挙がっているのに、ブッシュと電話会見した安倍がさっそく理解を示したって本当か? いかにも即断で口にしちゃいそうな人だけど…。


先週に読み終えた小説がベトナム戦争を背景にした内容だったのはたまたま。お正月休みはまったく本を読まなかったせいもあり、読了するまでにかなりの時間がかかったよお。長いし。

『オウエンのために祈りを』ジョン・アーヴィング著、中野圭二訳
(新潮文庫 1999年邦訳)

Fi2621422_1e 5歳児ぐらいで成長が止まってしまったような身体と、甲高く潰れた声を持ち、一方で知能レベルはすば抜けて高かった親友オウエン・ミーニーの生涯を、現在は母国アメリカへの失望からカナダに移住して女子校の英語教師をしている主人公が振り返るといった内容。

映画「サイモン・バーチ」の原作というのは読み始めてから気付いた。でも、映画と同じなのは途中まで。映画のサイモン(原作のオウエン)は子供の頃に亡くなってしまうが、原作では主人公とオウエンの友情は大人になるまで変わらず続く。そして、二人ともベトナム戦争に徴兵される年頃に…。

ジョン・アーヴィングを読んだのは本当に久しぶり。この本が書かれたのは1989年で、邦訳が出るのに10年かかり、さらに昨年になって文庫化され、平積みになっていたので買いました。正直、今さらアーヴィングの世界に馴染めるだろうかという躊躇もあったのだけど、切なかったなあー。
オウエンは、それは神の計画の一部であると信じたら気が狂ってしまいそうなことと、信じることでなんとか慰められることの板挟みに、一人苦しんでいたのだろうかと考えると切ない。宗教色の濃い内容で、キリスト教のカトリックとプロテスタントの違いくらいはともかく、会衆派と監督教会の違い? 何のこっちゃやらという感じで、しかし、ところどころにユーモアもあるし、謎解きの楽しみもあって、分からない点は読み進むにつれてあまり気にならなくなった。

主人公は、オウエンを回想する合間に、イラン・コントラ事件に揺れる母国レーガン政権に対する憤りをぶちまける。アーヴィング自身が、この頃のアメリカにほとほと愛想を尽かしていた様子が伺える。憤りはまた、テレビ伝道師などに象徴される欺瞞に満ちた宗教に対しても向けられる。そうした押しつけがましい宗教(一部の平和運動も然り)に後押しされるかのように、単純化していくアメリカに向けられる。読みようによってはかなりストレートな「怒り」と「嘆き」に満ちた小説。『ガープの世界』以来、風変わりなファンタジーとして楽しめるアーヴィングの作風に大きな変化はないのだろうけれど、ここは新鮮だった。昔読んでいたときには、単に気付かなかっただけかもしれないけど。

小説の政治的な面ばかりを取り上げるのはあまり好きではないが、ちょっとばかり引用。

ぼくの覚えている限りでは、ホイト夫人は、ある特定のアメリカ大統領を批判したからといって反アメリカ的とはいえないと言った最初の人だ。ある特定のアメリカの政策を批判することが、非愛国的ということにはならないとも言った。そして、共産主義者と戦うある特定の戦争にかかわることに反対しても、それは共産主義者の側に立つことと同じではない、とも言った。けれどもこのような区分は、グレイヴエンドの大半の市民には通じなかった。ぼくのかつての同胞である、今日のアメリカ人の多くにも、そんな区別は通じない

このような区分は当たり前じゃないですかと思うけれど、しかし我が身をふり返って、こういう冷静な判断を、一つ一つの出来事に対していつも適用させてきたかと問われると、まったく自信なし。その時々、直感のままに判断を下すのは簡単だが、慎重になろうとすれば、何かに賛成するにも反対するにももっと情報を集めてから、それまではもう少し様子を見ようと口をつぐむ。で、判断ができた時にはすでに機会を逸してしまっていることが多かったりして。・・分かってはいても容易なことではないです。でも何か、判断の芯となるものは持ち続けないとね。

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