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2006年11月 4日 (土)

売れない本の話が売れちゃった

書店で手にして、旅行したことのあるバルセロナが舞台だったので気になって読み始めた。上下巻に分かれた海外小説なのに、3カ月ですでに第6刷というのはかなり売れてるってことか。

『風の影』カルロス・ルイス・サフォン著/木村裕美訳
(集英社文庫 2006年邦訳)

Fi2621403_1e いつもは話題の本やベストセラーにランキングされる本にはあまり興味がわかず、むしろそういう本を本能的に避ける傾向がある。大勢の人たちと同じ本を、同じ時期に読むというのがまずは苦手。だから面白そうと感じたら、あえてしばらく寝かせてから読んたりする。なんでかと考えると、結局は評判に左右されやすい性格だからだと思う。素直に読めたら苦労はしない。困ったことに、そこそこ面白い本も、マスコミ等で絶賛されていると、それほどでもないだろと思えてしまう性分。で、この小説も例外ではなかった。読んでいると、物語の展開より、世界中で売れているのは何故かという謎のほうが気になってしまって…。はあ、つまらない性分だ。

図抜けて売れている本がとびきり面白いとは限らず、売れない本にもこっそり面白い本がたくさんあって、この小説はフリアン・カラックスという無名作家の小説を巡って起きている不吉な事柄(何者かが本を探しては焼き捨てている)と、その本に魅せられてしまった古書店の息子の成長物語が骨子になっている。
描かれているのは1945年から1955年のバルセロナが中心なので、旅行で目にしたものはあまり参考にはならなかった。すでにスペインのどこの街の記憶だったかがごっちゃになっている。

少年と年上の女性の恋が出てきた時点でトマス・H・クックっぽい?と思い、あの過剰にも思える男のセンチメンタルに付き合わされるのは勘弁だな、などと思ったりしたが、読み進めるにつれて活劇とまではいかないにしても、ダークヒーローもの的な味わいが出てきたのは面白かった。しかし、さほど感傷的な内容でなかったことにほっとすると同時にミステリアス色まで薄れて、長編だったこともあり中だるみを感じてしまったかも。
上巻で引っ張ってきた数々の謎が、下巻において1通の手紙の中ですべて明かされてしまう場面は都合が良すぎるし、内容もいささか退屈だった。物語の山場であろうに…。でも、結末の持っていき方は好きです。特に気になったのは、少年の初恋の女性のその後の人生の描かれ方。辛辣(笑)。でもこの部分に想像をかき立てられてしまった。

それで、なぜこの小説がそんなに売れているかだが、歴史を背景にした悲恋ものが好きな大人が多いこと。プラス、書物への愛情が語られる小説であること、かな? 書物をテーマにした小説は、それだけでマスコミなどに取り上げられる機会が多くなり、評価も5割増しくらい高くなる気がします。

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コメント

めずらしくヒメヒカゲさんと同じ本を読んだ!「風の影」については(まあ)納得。ぼくも(は)少年の初恋のめくらの少女の話しか残ってない(ごく最近読んだが)トマス・H・クックについて”過剰な男のセンチメンタリズムにつき合わされるのは勘弁”というのが面白い。ここにおいてヒメヒカゲさん(女)とwarmgun(男)は劇的に感じ方がちがう。つまり、センチメンタリズムは認めるが、それが好きである。女と男のリアリズムは好きでないのだ。それと、クックの場合、そうとう”リアル”なサディズム的犯罪があると思う。このセンチメタリズムとサディズムも結構”現実的”であると思うのですが。

>warmgunさんこの本を読んでいる最中にwarmgunさんのところで書名を目にして、わ、同じ本を読んでいるんだ! と思いました。同じく後半はかったるかったです。めくらの女性は途中から出てこなくなって、めくらの意味はあったのかとか、なにか中途半端なエピソードでしたね。トマス・H・クックのことをクサしてますが、実は大抵は読んでいます。矛盾してますが(笑)私からすると、女性の描き方がどうしても嘘っぽく思えるのですが、こういうの男性は好きだろうなというのは分かるんです。だから、一歩引きながら、男の世界を覗き見する感覚で読んでます。サドマゾ要素ありますね。残酷なところは、リアルかもしれません。

つまりさ、ある種の男(小説を読むような男)は、”嘘っぽい女”を求めているんじゃないの。しかも、これは小説内だけじゃなくて現実でもよ。だから現実の女にいつも幻滅し、ないものねだりしてるのさ。これは(単純だが)そうとうの”狂気”よ(笑)女性の場合、この逆が成り立つのだろうか?もちろん成り立つのだが、微妙にちがう(この違いが問題だ!)と思う。さらに問題なのは、まったく互いにリアルな男女関係というものだね。ぼくにはどうしてそういう関係が成り立つのかワカンナイ!

>warmgunさん出掛けていました。私は一応女ですので、女のことは逆によく分からないし、男のことはもっと分からないのですが、女の場合も、どこかで嘘っぽい男を求めているんでしょうね。微妙な違いって何だろうか・・・意外に同じかもと思ったりして。リアルな男女関係・・・嘘ツキで成り立つ関係とか?あー怖い怖い。でもその嘘を拒否して生き続けたら狂気ですね。

つまり女性にとっては”同じ”なのよ(つまり女性にとっては自分が”男と同じ”人間であることが自明だから)まさに、狂気。しかし嘘をつかないという嘘もある。ぼくはすべてのひとに狂気(すれすれ)はあるとおもう。つまり、狂気は特別なことじゃない。

>warmgunさん>つまり女性にとっては自分が”男と同じ”人間であることが自明だからわお、だんだん難しくなってきたぞ(笑)それと関係あるかどうかわかりませんが、ある児童文学の専門家が、「女の子が好きなものを、男の子も興味を持つとは限らない。 でも、男の子が好きなものは、女の子も共有する」とか言ってました。例として、少女漫画と少年漫画を挙げていましたが。

ヒメヒカゲさんから3ヶ月遅れで読んじゃいましたー。私ベタホメしちゃいましたー。センチメンタルな男なんですなー・・・。σ(^_^;)

>Djangoさんセンチメンタルとかロマンチックとかって、少年のそれと少女のそれとは全然違うなあと思うこの頃(笑)。でもこの本は、男女関係なく本当に評判がいいようですね。

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