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2006年9月 4日 (月)

「なぜ誰も彼もおれが慰め下手だと思うのかな?」

エジンバラのジョン・リーバス警部シリーズ第15作。これが邦訳されたものの中ではシリーズ最新。

『獣と肉』イアン・ランキン著/延原泰子訳
(早川書房 2005年邦訳)

Fi2621367_1e すさむ一方の低所得者用市営団地で、アジア系難民と思われる男性が刺し殺される。リーバスらはまずその男性の身元を突き止めようと目撃者を探すが、ドアを閉ざして姿すら見せない住民たちに手こずる。また同じ日、改装中のパブの地下室から女性と赤ん坊の骸骨が見つかり、その捜査にもかかわるリーバスとシボーン・クラーク部長刑事。シボーンはもう一つ、過去にレイプされて自殺した女性の妹が、強姦犯の出所後に行方不明になっていることを女性の両親から知らされ、家出だろうと思いつつも、個人的に捜査してみることにする…。

グラスゴー郊外で移民男性が殺されるという実際の事件からヒントを得て、書かれた作品だそう。積極的に多くの難民を受け入れてきた英国で、いま深刻さを増している社会的なゆがみや軋轢に焦点を当て、読者もリーバスと一緒に、その問題を改めて考えてみるという趣向かと思う。同じ英国の映画「堕天使のパスポート」などと合わせて観たり読んだりすると、より分かりやすい。
日本もよそ事ではないんだよね。少子高齢化を考えると、人道主義に目をつぶって、もっと難民を受け入れろという国際的な圧力を無視していれば済むという、そんな単純なことではないわけで。

前作も今作も、リーバス自身が大人しめなのがちょっと寂しい。背景の複雑な現実的テーマを扱っているだけに、仕方ないか…。
今作はセント・レナーズ署の犯罪捜査課が、警察の組織再編成のために解散されられて、リーバスもシボーン・クラーク部長刑事もエジンバラ市内の小さな警察署へ異動させられたところからスタート。部長刑事のシボーンはなんとか机を与えられたのに、警察年金を満額でもらえる齢になっているリーバス警部には机すらなく、肩叩きされているのは明らかなのだが、それにめげることなく、怒りを表すこともなく、そんな境遇も楽しんでいるかのように見えるのが可笑しかった。人間的余裕が出て、それもまたイカしている。

週末に仕事を持ち帰ったのだが、結局バッグからも取り出さずに終わってしまった。「やらなきゃやらなきゃ」と思いながら休日を過ごしただけ損をした。自分でも予測していたが…。さあー明日からが怖いぞ!
ついでに早く夏休みが取りたい!

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コメント

週末に仕事持ち帰り、やらなきゃと思いながら、結局やらず、損したよな気分になったことあった、あった。お勤めご苦労様です!

>warmgunさん励まし、ありがとうございます。やらなかったせいで、今日も職場に一人ぼっち、残業中です。契約社員なのに!

あった、あった、みんな帰ったあと、職場でひとりぼっち。ぼくはけっこう(そういうのが)好きな時もあった。

>warmgunさん私も、ほかに1名残っていたら、早く帰ってくれないかなと思うほうです。

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