涙の入れ墨には気を付けろ。
ロサンゼルスのハリウッド署殺人課勤務、ハリー・ボッシュ刑事シリーズの2作目。
『ブラック・アイス』マイクル・コナリー著/古沢嘉通訳
(扶桑社ミステリー 1994年刊)
行方不明だった麻薬課刑事の死体が、モーテルの一室で、ショットガンで頭を吹き飛ばされた状態で発見された。ポケットには「おれは自分が何者かわかった」という遺書らしきものが。内務監査課が乗り出し、殺人課のボッシュはその捜査から外されるが、ひょんなことから同じ時期に起きたハワイの麻薬運び屋と、身元不明のメキシコ人の殺害事件を引き継いで捜査するうちに、それらがすべてメキシコの麻薬組織と関連していることを突き止める…。
1作目の『ナイトホークス』の結末から、作家の傾向を判断し、麻薬課刑事の死の真相を予想しながら読んだら、その通りだった! でも、この小説の面白さは古典的なハードボイルド小説を引き継ぐ作風にあって、謎解きは大した問題ではない。
アメリカのカレクシコウ、メキシコのメヒカリという国境を挟んだ2つの町の風情が、はぐれ者のボッシュや暗い過去を背負う麻薬課刑事の心境と重なり合い、面白かった。世界地図で見ると、改めてロサンゼルスはメキシコ国境に近いんだなぁと思う。メヒカリは、1900年頃に綿花や野菜を収穫するための安い労働力として、1万人の中国人、それも男性ばかりを連れてきて人工的に造られた町だということも初めて知った・・・ドラマ「燃えよ!カンフー」を思い出した。
タイトルのブラック・アイスには2つの意味が込められている。一つは、コカインとヘロインとPCPを合わせた最新のドラッグのこと。もう一つは、雨が降った後に凍って滑りやすくなったアスファルト道路は、見た目には氷の張っていることが分からず、危険に気付いた後にはもう手遅れだからご用心という意味らしい。
本書には、目の下に涙の入れ墨をしたメキシコ人の殺し屋が登場する。一人殺すごとに、涙の入れ墨の数も一つずつ増えていく。最近読んだ何かにも登場したけど、思い出せない・・・。
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