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2006年8月

2006年8月29日 (火)

非国民じゃないです、念のため。

今日、職場で一回り近く年上の男性と映画の話をしていて、
「映画館で邦画を見始めたのは最近」と言ったら、
どういう流れか「日本の音楽は聴かないの?」と聞くので、
「昔からほとんど聴かない」と答えた。
「日本の小説は?」と聞くので、
「もう何年もほとんど翻訳小説ばかり」と答えたら、
「アホや…」とつぶやかれてしまったぜ。。。

たまたま時間切れとなり、話はそこで終わったが、
実はブログを始めてしみじみと、嗜好が舶来モノに偏ってるなと感じていて、
なぜだろうとたまに考えてみないこともないんです。
別に偏っていても勝手だろうと思うし、他人はまったく気にしないだろうが、
再び「アホや」とつぶやかれた時のために、
自分なりの言い分を、今思いつくだけ箇条書きしておこうと思います。


・まず小説については、翻訳される時点で出来のいいもの悪いものが
 ある程度淘汰されているわけで、買って読んでハズレが少ない。
 特にプロットが途中で破綻しているものは翻訳小説にはあまりないが、
 日本の小説にはざらにある。
・海外の小説は、生活習慣が違ったり、固有名詞・地名にも馴染みがなく、
 のめり込みにくいという意見があるが、自分にはむしろその豊富な情報量が魅力で、
 しがない現実から逃避するにも打ってつけである。
 この点で、日本の時代小説の場合は、翻訳小説に近い楽しみがあるのかもしれない。
・カタカナの人物名が覚えにくいという意見があるが、字面で覚えるので
 さほど問題なし。日本人の名前であっても、よくある漢字二文字の名字などは混乱する。
・日本語の表現の美しさ、的確さについては、今の日本の小説も翻訳小説も
 それほど差は感じない。あくまで個人差と思う。
 物語の組み立てが巧かったり着眼に優れた小説家が、日本語に敏感とは限らない。

・音楽については、今の日本のポピュラー曲のほとんどが西洋音楽の影響下にあるので、
 あとは詞にどれだけ重きを置いて聴くかによると思う。
 自分の場合は、洋楽を聴き始めたのが早かったせいか、音楽を聴くときに
 詞はまったく問題にしていない。もちろん例外はあるし、外国曲を歌詞カードを
 見ながら聴いたりもするが、まずメロディやリズム、声や音色、コード展開などの
 アレンジが気に入らなければ、その詞に注目することもない。
 ただし、ジャズなどのインストや、バンドのライブを楽しむことは国内外を問わず。
・自分が音楽に興味を持ちはじめた頃にテレビやラジオで簡単に触れることのできた
 日本の音楽は、歌謡曲と演歌ばかりだった。バンドを始めた頃にお手本としたのは、
 西洋音楽を真似た日本のバンドよりその本家。
 よっていまだに、音楽に関しては外国コンプレックスがある。
 そして日本のバンドには嫉妬心がわく(笑)。

また、何か思いついたら付け足そうと思います。

2006年8月27日 (日)

私家版・元気になる音 その31

Fi2621364_1e サモアをルーツとし「あの小錦の従兄弟も在籍する巨漢揃いバンド」との、ある種キワモノ的キャッチコピーに名前負けすることなく、中身の音楽的完成度もかなり高かったブー・ヤー・トライブのデビューアルバム『ニュー・ファンキー・ネイション』からの曲。


Boo-Yaa-T.R.I.B.E.の“Rated R”


1990年発表のアルバムということは、もう16年も前ではないの!
久々に聴いてみたら、やっぱり良かった。マザーファッカーと繰り返し叫び、人種差別者に喧嘩をふっかける曲を元気が出る曲に選ぶ私はどうかと思うけれども、デブ揃いならではの重量級ヒップホップ・ファンクにしびれる!
サウンドもラップボーカルも、地を這い、何かを引きずるように重くて、さらにキレもあるから、かっこいいんだ。他の曲も全部ね。走っている象がチーターのようなすばしっこさで急カーブを切ったときのワンテンポおいてやってくる風圧と振動を想像してみてください。・・・んー、なにか違うな、この例えは。
とにかく巨体から生じる迫力あるタメと、シンコペするリズムの相乗効果の素晴らしさを言いたいんですよ! ラップの声質自体に味わいがあって、詞が分からなくても、メロディやリズムを奏でる楽器の一種として聴けてしまうというのは巨漢ラッパーの強みかなとも思います。
そして曲アレンジのポップさが、さらに彼らをお気に入りに押し上げました。エレクトリック・マイルスを元ネタにした曲なんかがあるのも憎い。ストリート・ギャング出身らしいふてぶてしさやジャケットから感じ取れるおとぼけ感もステキだ。特にラップに興味はなくても、Pファンク系の音楽が好きなら、その期待に十分応える1枚かと思います。ほんとに楽めるファンク曲揃いですからっ。


少数民族の誇りがバックボーンにあるやつらは、ビッグセールスを記録しないからといって簡単には解散しないし、根強い固定ファンもついていそうだよね。あくまで推測だけど。調べてみると、ブー・ヤー・トライブはメンバーは6人から4人に減り、サウンドは時代に応じてメタル・ロック風一辺倒に変化しているが、今も現役で、地元ロサンゼルスを中心に活躍しているようだ。


ちなみに小錦の従兄弟というのは、彼らがメジャーデビュー前にヒップホップのダンスチームとして大阪に出稼ぎに来ていたときに名乗っていたらしいので、本当のところは分かりません。

涙の入れ墨には気を付けろ。

ロサンゼルスのハリウッド署殺人課勤務、ハリー・ボッシュ刑事シリーズの2作目。

『ブラック・アイス』マイクル・コナリー著/古沢嘉通訳
(扶桑社ミステリー 1994年刊)


Fi2621363_1e 行方不明だった麻薬課刑事の死体が、モーテルの一室で、ショットガンで頭を吹き飛ばされた状態で発見された。ポケットには「おれは自分が何者かわかった」という遺書らしきものが。内務監査課が乗り出し、殺人課のボッシュはその捜査から外されるが、ひょんなことから同じ時期に起きたハワイの麻薬運び屋と、身元不明のメキシコ人の殺害事件を引き継いで捜査するうちに、それらがすべてメキシコの麻薬組織と関連していることを突き止める…。


1作目の『ナイトホークス』の結末から、作家の傾向を判断し、麻薬課刑事の死の真相を予想しながら読んだら、その通りだった! でも、この小説の面白さは古典的なハードボイルド小説を引き継ぐ作風にあって、謎解きは大した問題ではない。
アメリカのカレクシコウ、メキシコのメヒカリという国境を挟んだ2つの町の風情が、はぐれ者のボッシュや暗い過去を背負う麻薬課刑事の心境と重なり合い、面白かった。世界地図で見ると、改めてロサンゼルスはメキシコ国境に近いんだなぁと思う。メヒカリは、1900年頃に綿花や野菜を収穫するための安い労働力として、1万人の中国人、それも男性ばかりを連れてきて人工的に造られた町だということも初めて知った・・・ドラマ「燃えよ!カンフー」を思い出した。


タイトルのブラック・アイスには2つの意味が込められている。一つは、コカインとヘロインとPCPを合わせた最新のドラッグのこと。もう一つは、雨が降った後に凍って滑りやすくなったアスファルト道路は、見た目には氷の張っていることが分からず、危険に気付いた後にはもう手遅れだからご用心という意味らしい。

本書には、目の下に涙の入れ墨をしたメキシコ人の殺し屋が登場する。一人殺すごとに、涙の入れ墨の数も一つずつ増えていく。最近読んだ何かにも登場したけど、思い出せない・・・。

2006年8月21日 (月)

Everybody gotta have a dream

都内では1館、夜9時からのレイトのみで上映中です。
メンフィスを舞台にした黒人音楽映画。

「ハッスル&フロウ」(2005年 米)
★★★★


Fi2621362_1e メンフィスのストリートで、ポン引きに麻薬調達というしがない裏稼業(=ハッスル)で生計を立てる中年男にも、かつては大きな夢があった。それはプロのラッパーとして成功すること。ある日、ホームレスの男からおもちゃの電子キーボードを手に入れたことから、一度はあきらめた夢が脳裏によみがえる。折から、同じ街の出身で、今ではアルバムがプラチナセールスを記録するほどに成功を収めたラップスターが凱旋ライブを行うことになり、男はそれを自らの起死回生のチャンスと見込む…。


現実にアメリカのラップスターの中には、若い頃に犯罪に手を染めた人たちが少なからずいて成り立つ話なんでしょうね、これは。
やばい過去があるからこそ、ライム(詞)に迫力と説得力が加わり、カリスマとして支持されたりするじゃないですか? 実力に恵まれていても、それ以上にチャンスを掴むことが大変で、そのためには自分が世話している娼婦に無理言って泣かせたりもします。ラストのどんでん返しを含め、通常の感動的なサクセスストーリーとはひと味違う映画になっていて面白かったです。


けど、骨格となるストーリーよりも、一つ一つのエピソードや、映像のセンスに心引かれた。蒸し暑い日中、冷房もついていない車に娼婦を乗せて街を走りまわるシーンや、狭い家に同居する娼婦たちとのやりとりなどからは、主人公らが感じている閉塞感や情けなさが生々しく伝わってくる。しかし、笑えるところもかなりあり、娯楽性は十分。主人公がポン引きの設定といい、全編に流れる70年代風の音楽といい昔のブラックムービーへのオマージュらしきものも感じ取れ、そのへんに詳しい人が見れば、もっと興味深い映画なのかもしれない。


主演のテレンス・ハワードと、成功した同郷のラップスター役のリュダクリスは、映画「クラッシュ」でも共演していて、あっちとは世間的立場が逆転した役回り。また、クラブの店主役でアイザック・ヘイズが出演。そしてなぜかエンドロールには、メンフィスの音楽プロデューサー、サム・フィリップスに捧げるとの一文が…。
(おっと、この映画にも画期的なスタジオが登場するんだった…)
脚本・監督のクレイグ・ブリュワーがメンフィスの出身ということで、あくまでもメンフィスにこだわった映画らしい。


自分的には娼婦役のタリン・マニングとタラジ・P・ヘンソンがとても良かった。彼女たちのキャラクターも演技も。自分がいいと感じる男の映画は、たいてい女性たちが魅力的だ。女がちゃんと描かれているというのは、男のこともちゃんと描かれているのだ、きっと。
マニングは「8Mile」でエミネムの元恋人役を演じた女優さんだが、蓮っ葉でかつ健気な役がよく似合う。

2006年8月17日 (木)

こうなればもう意地っす。

北村一輝の出演作はとりあえず観てみるコンプリート、いまだ続いてる。


「東京フレンズ The Movie」(2006年 日本)
★☆

バンド、劇団、絵を描くこと、玉の輿(だっけな?)・・・DVD販売を目的に作られたドラマ版「東京フレンズ」は、同じ居酒屋でバイトする20代の女性4人の夢探しや夢への挑戦をけっこう真面目に描いていて、最近のテレビの連続ドラマに比べたら、クオリティは高く感じた。主演が大塚愛なので侮っていたが、脇役陣も意外なほど豪華だった。

しかしこの映画版では、もっぱら大塚愛にスポットが当てられ…。さすがに大きなスクリーン上映で、しかも単独主演は、彼女には荷が重すぎる。日本の女の子歩きの典型というか、かかとを引きずるようにしてニューヨークの街をちんたら歩く姿ばかりが印象に残ってしまった。ストーリーも半分はドラマ最終話の焼き直しで、内容は薄いわ、話には深みがないわでがっかり。余韻のある終わり方をしたドラマ版の、むしろ足を引っ張ることになりかねないのでは?
なーんて。大塚愛の音楽プロモムービーに対し、見当違いなクレームなのだった。


「花田少年史 幽霊と秘密のトンネル」(2006年 日本)
★★★

今週末から公開の映画。先週、試写会で観た。原作の漫画は読んでいないが、深夜のアニメは大好きで見ていたので、話の設定は知っている。すると、どうしても比べてしまうなあ。篠原涼子のお母さん役は、やはりちょっと無理があると思う。でも、確実なヒットを狙うなら、若めの人気女優の起用となるんでしょうね。内容は映画というよりテレビドラマって感じだ。北村は悪い幽霊役で「顔芸」を見込まれての起用とみた。でもそれだけ。

試写会会場は、近隣の小学校の児童と保護者で半分は埋め尽くされていて、映画が始まった途端に、子供たちが笑う笑う。どこが面白いんだ?ってとこでもクスクス、ケラケラ笑う。素直に笑ったり驚いたりできる子供たちに囲まれて映画を見るってのもたまにはいいもんだなーなどと思ったりして、和んでいる自分。
前の席の子供なんか、分からないところがあるたびに隣のお母さんにうるさいほど質問を浴びせていたけど、この子、賢くなるかもなーと感心したりして。
子供連れの客にはいかにも喜ばれそうな夏休み映画でした。

2006年8月14日 (月)

世の中は不器用な愛情だらけ?

愛情をうまく伝えられない父親と、うまくキャッチできない娘。
うちもそうだと思っていたが、男で特に苦労したことがないのは
ちゃんと受け取れていたということかな。
受け取ったと伝えないうちに父親が死んでしまったのは一緒だが。

「嫌われ松子の一生」(2006年 日本)
★★★★★

ようやく観てきた。観て良かった!
同じ中島哲也監督の『下妻物語』を軽々と上回ってしまった。
評判に違わずとても面白かったし、久々にラブロマンス的要素にもはまった。
主演の中谷美紀の、幸薄そうな雰囲気はけっこういけてたと思う。
瑛太、伊勢谷友介、黒沢あすか、ゴリもナイスキャスティング!
俳優以外の人たちがたくさん出てきて、浮きそうな演出も多かったのに、
テーマが明確になるにつれて、まったく気にならなくなっていた。
内容がヘビーなので、そのままストレートに描いていたら
松子の前向きなパワフルさはごく一部の人にしか伝わらなかっただろう。

顰蹙覚悟で言わせてもらえば、松子のめちゃくちゃな人生に少し憧れる。
伯母は学校の教師だったけど、その後○○○○になって○○までしてしまったと
聞かされたときの、甥っ子の好奇心丸出しの反応にも、
漠然とした憧れが混じっているように感じた。
私のように幸福と不幸の振り幅がほとんどない生活を送っている人間には、
松子の人生がものすごく充実していて、羨ましいとすら思えるのだ。
しかし、劇的な人生を歩んできた松子が、誰かに愛されたいとあがくことを
いったんはやめたのちに、再び見出した心の拠り所がテレビ○○○○とは、
なんという皮肉だろうか…。
それじゃあ私の今の生活と変わんねーじゃん…。

ラストの、松子の一生の回想シーンを交えた数分間は個人的にはいらなかった。
あそこで少し醒めてしまいました。

2006年8月12日 (土)

私家版・元気になる音 その30

ブラジルのリオで70年代に結成されたファンク系バンド、バンダ・ブラック・リオが、2000年になって再結成されてから発表した2枚目(?)のアルバム『Rebirth』からの曲。

Banda Black Rioの“Nova Guanabara”


Fi2621359_1e ファルセットの入らない男性コーラスが気持ちいいーー! 8曲目のこの曲と、次の9曲目のファンク曲「Tabuleiro de Cor」が特に好きです。続けて聴くからってのもあるけど。

“ブラジルのアース・ウインド&ファイヤー”って、まさに!
これ以上にぴったりな、この人たちのサウンドを形容する言葉は他に思い浮かばない。アレンジ面での影響が濃厚。
ただし、ファルセットを駆使するシンガーがいないので、爽やかざんす。インスト主体時代のクール&ザ・ギャングを彷彿とさせる曲もあります。基本は、初代バンドが結成された70年代後半のクロスオーバー/フュージョンで、今もそのサウンドを守っているという印象。そのために現代ではインコグニートあたりのクラブ系サウンドと一緒に語られるのかも。


しかし、楽器が達者というのは、いいねーやっぱり。フュージョンみたいだ、なんてバカにしちゃいかんです。もっとも最近はそういう過度な偏見もなくなってきたと思いますが・・・。さらっと聴き流せそうな曲も、活きのいいポルトガル語のラップがアクセントになって、アルバムを通して飽きさせないクオリティはなかなかのものです。
この人たちの昔のアルバムも聴いてみたいと、試聴サイトを探してみたが、もともとはインストグループなのかな?サウンドは昔のほうが硬派だけど、こっちの歌入りのほうが楽しそうだよ。
来日しないかなー。切望!

金に縁なし、死体に縁あり

↑文庫の帯にあったコピーです。

『闇を見つめて』ジル・チャーチル著
(創元推理文庫 2006年邦訳)


Fi2621358_1e 待ってました!グレイス&フェイバー・シリーズの第3弾。舞台は世界大恐慌のまっただ中にある1930年代のアメリカ。両親を亡くし、大金持ちから貧乏のどん底に転落し、しかし大伯父の遺言によって大きな屋敷には住めるようになった兄妹が、探偵もどきな活躍をする、ジャンルとしてはコージー・ミステリー。
今作は、兄ロバートが屋敷の敷地内にある古い氷貯蔵小屋からミイラ化した死体を見つけ、一方、妹のリリーは婦人会で知り合ったメンバーの夫が何者かに殺されたことから、犯人探しに首を突っ込むことに…。


ジル・チャーチルの作品は、主婦探偵ジェーン・ジェフリー・シリーズから欠かさず読んでいる。 気負いなく読めるのにミステリーとしてもしっかりしていて、重厚な長編小説の間に読むといい気分転換になるのだ。
しかし、今作は事件自体はあっさり解決してしまい、物足りなかったかな。このシリーズは、育ちの良すぎる兄妹がどう貧乏を切り抜けていくかが面白かったのに、今回は大恐慌そのもの(ボーナス行進事件)にスポットが当てられ、ユーモアも少なかったように感じる。次も必ず読むけど。

原題は「Someone to Watch over Me」。その前の2作は「Anything Goes」と「In the Still of the Night」。古いスタンダード曲のタイトルをそのまま使っている。

警察の腐敗を女性警官が暴く

『不当逮捕』ナンシー・テイラー・ローゼンバーグ著
(講談社文庫 2003年邦訳)


Fi2621357_1e 夫は多額の治療費を借金に残して病死、 2人の子供を育てながら女性には珍しい夜間パトロール担当の警官として働くレイチェルは、同僚の男性警官から暴行を受け、上司に訴える。しかし、警官仲間はもちろんその上司も、男性警官をかばい、むしろ組織を乱す者としてレイチェルを疎んじ始める…。


警官の職権乱用、警察組織の腐敗ぶりは、どこの国にもある程度共通していることと想像がつくが、アメリカ・カリフォルニア州を舞台としたこの小説に出てくる警官たちの、日頃のストレスの蓄積から生じたゆがみっぷりは半端じゃない。
女性警官に対するセクハラや嫌がらせが、これでもかというほど次から次へと出てきて、ものすごく不快な話なんだが、ウジウジした描写はなしにテンポよく話が進むので、夢中になって読んだ。

しかし、あの結末は・・・。とってつけたような・・・。そこまで深刻な話に落とす必要はない気がするのだが、作家自身、警察に勤務していた経歴の持ち主というから、現実の警察組織も多様な問題を抱えていて、さらにそれは警察だけの問題ではないということを、あのラストを持ってくることで強調したかったか? 青臭い正義など通用しない世の中だってことは分かるけどね。

靴コレクターにはちと憧れる。

でも履けない靴が多すぎる。
年を取るとますます自分の足に合う靴がなくなってきて悲しい。
7月にレンタルしたその他の映画メモ。

「イン・ハー・シューズ」(2005年 米)
★★★★
性格も生き方も対照的なユダヤ人姉妹の喧嘩別れと仲直り。
継母が絵に描いたような嫌なやつだったり、姉の恋人に理解力が
ありすぎたり(?)と甘すぎるところもあるけど、
印象的なエピソードやシーンが盛りだくさんで、会話も良かった。
カーティス・ハンソン監督の映画は会話がよく練られているので
感心しながら見入ってしまう。

「モーターサイクル・ダイアリーズ」(2003年 英/米)
★★★★
チェ・ゲバラが医学生時代に友人と行った南米大陸縦断の旅を映画化。
ロードムービーには弱いのだ。あー旅したい!
映画館の大きなスクリーンで観るべきでした。

「ランド・オブ・ザ・デッド」(2005年 米/カナダ/仏)
★★★
深夜にやっていたドラマ「アキハバラ@DEEP」にゾンビの回があって、
そういえばこれ、映画館に観に行こうと思って行かなかったんだと思い出し、
借りてきた。ゾンビが知恵や感情を持ちはじめると、
ちっとも怖くない。住み分けることでの共存を選ぶラストもほのぼの。
ブッシュ・アメリカ的ではない結末に、作り手の意図を感じちゃったりして。
続きがあるとしたら、良い人間と良いゾンビが手を組んで、
悪い人間&悪いゾンビに立ち向かう内容かな?

「旅するジーンズと16歳の夏」(2005年 米)
★★★
それぞれに悩みを抱える4人の幼なじみの女の子たちの成長物語。
アメリカ公開時にはけっこう評判の良かった映画。
期待しすぎた。何もかもがティーンエイジャー向けだった。
いかにも真面目な人が作った映画で、その生真面目さがつまらないかも。

「エルフ サンタの国からやってきた」(2003年 米)
★★
真夏にクリスマス映画なんぞを借りてしまいまして…。
だってバカ笑いできる映画が観たかったんだ。
主演はコメディ俳優として今大人気らしいウィル・フェレル。
しかし、これも対象年齢が限られる内容だった。
ワガママ承知で、もう少しひねりのある毒が欲しかった。

2006年8月 5日 (土)

田舎が温かいと思ったら大間違いだ。

またまた新宿の武蔵野館。最近ここばかりで映画を観てるけど、
単に他の街に行くのが面倒なだけだったりする。

「ゆれる」(2006年 日本)
★★
(少しネタバレ)

都会に出てカメラマンとして成功し、かっこよく女性にももてる弟
(オダギリジョー)と、家業のガソリンスタンドを継ぎ、独身のまま
中年に差しかからんとしている兄(香川照之)が、母親の一周忌で再会し、
幼なじみの女性(真木よう子)を巡るごたごたの中で
それまで封印されてきた兄の「ねたみ」、弟の「やましさ」が露わになって、
大きな犠牲を払ったすえに、兄弟の絆を再確認する話…。


と解釈しましたが、単純すぎる解釈かもしれません。
特に最後の一行は、あくまで私の想像だ。
テーマ自体がゆれているように感じてしまい、よく分からないのだ。
その曖昧さがセンスいいという考えもありだが、
それにしては最初からいろいろと思わせぶりなシーンが多く、
その思わせぶりのわけは何も具体的に示されないまま、
ダラダラと続くのは少し苦痛でもあります。
約2時間の映画なのに、3時間くらいに感じたよー。

兄弟と幼なじみの女性の間には、過去にも何かあったのでは?と
考えたんだけど、そういうシーンはなかった。
もう少し過去を絡めて、二人の心の中の確執を伺わせるエピソードが
あったほうが、私なんかは共感しやすかったのだが、
同性の兄弟がいる人は、そんなもの余計と思うのかもしれない。
サスペンス風だが、サスペンスを期待すると肩透かしだ。

でもでも、香川照之の演技がすげー! 巧い!
あの法廷シーンでの表情変化とか話し方とか。鳥肌立ちそうになった!
ああいう境遇の長男、うちの田舎にもいっぱいいるんだよね。嫁の来てがないまま、
やがて年老いた両親の面倒も一人で見ていかなければならない農家の男性の話を
田舎に帰るたびに、母に聞かされる。
だからってその人が惨めだとかは、私はちっとも思わないんだけど、
周りから惨めとしか見られないとしたら、それは辛いなと思う。

タイトルは、拘置所にいる兄が面会に来た弟に向かって放った言葉。
いい人はずっといい人でいなくてはならない。
うちの田舎も相当に閉鎖的だったから、これは分かる。

2006年8月 4日 (金)

2世代にわたる友情の絆

ギリシャ系移民が主人公のワシントン・サーガ完結編。

『生への帰還』ジョージ・P・ペレケーノス著
(ハヤカワ文庫 2000年邦訳)


Fi2621354_1e 1作目が第二次世界大戦後、2作目が70年代、3作目が80年代ときて最終作の時代はついに現代、1998年だ。ディミトリ・カラスとマーカス・クレイらは、経営していたレコード店を大手チェーンに売却し、今はビジネスコンサルタント会社を経営している。しかし、ディミトリのほうは3年前、残虐な強盗殺人犯の逃走車によって一人息子の命を奪われて以来、妻とも別れ、鬱病状態のままでいる。その彼が、今は弁護士の調査員をしているニック・ステファノスらの助けにより、少しずつ元気を取り戻していく過程と、ついに訪れた復讐の機会を描いたのが本作。


基本的にこのシリーズは、毎回パターンが同じだ。アメリカの底辺社会で起きる犯罪と、男たちの友情がメインテーマで、最後は私刑ともいえる復讐劇で終わる。こういう内容だから、時代的にいちばん雰囲気を醸していて、面白かったのは1作目の『俺たちの日』。今作は、もう少しクライム・サスペンス的な盛り上がりが欲しかったかもしれない。でも、相変わらず脇の人物を魅力的に描くのはうまいと思った。


“エレクトリック”マイルスに、カーティス・メイフィールド、オージェイズ、グラディス・ナイト、リック・ジェイムズ、メジャー・ハリス、ルーサー・ヴァンドロス、エディ・ロックジョー・デイビス……そのほかにも、名前に馴染みのないローカルなミュージシャンを含めて、今回も音楽ネタがたくさん出てきて、これがいい息抜きになり、楽しく読めた。
ペレケーノスはニック・ステファノスを主人公にした探偵小説シリーズも書いていて、そっちも面白いのかしら?

2006年8月 2日 (水)

キウェテル・イジョフォー

Fi2621353_1e 木植えてる? まずは一発では覚えられない名前だ。でも、顔だけはすぐに覚えた。ロンドン出身の俳優、キウェテル・イジョフォー。
最初に観たのは「ラブ・アクチュアリー」だった。先日観た「インサイド・マン」では、デンゼル・ワシントンよりもその相棒刑事役をやっていたキウェテル・イジョフォーのほうが印象に残って、調べてみたら、最近めきめき売れているのですね。なんとなく今後、デンゼルにも負けない、正統派で主役がはれるアフリカ系スターになりそうな気がして、ほかの出演映画も借りてきた。


「堕天使のパスポート」(2002年 イギリス)
★★★★
イジョフォー主演作品! ロンドンで生きる不法滞在者、密入国者たちの話。登場人物たちは国籍も、国を離れた理由もさまざま。自由を手に入れようと安賃金で必死に働く彼らが窮地に陥ったとき、それを利用して金儲けを企むのも、また移民たちだったりする…。

ネタバレになるので書かないが、こういう取り引きというのは世界中で現実に行われているんですね…。日本でも借金返済絡みでたまに耳にするけど。シリアスなテーマながら、スペイン系のホテル支配人、カリブ系(?)の娼婦、死体安置所で働く中国系の友人など、脇役たちのキャラクターが魅力的で楽しめた。しかし、悪賢いわりにマヌケだ、支配人。

原題は「Dirty Pretty Things」。日本語だと必要悪に近いニュアンスかな。例えば「ヒズボラ殲滅のためなら、レバノンの民間人数百人が巻き添えになって死ぬのもDirty Pretty Things」とか…。もちろん悪い冗談。でも、今の無法すぎるイスラエルの行いに対する、日本のテレビニュースでの扱いを見ているとあまりに軽すぎちゃって、本気でそう考える人が増えているとしても不思議じゃない気がしている。


「メリンダとメリンダ」(2004年 アメリカ)
★★★
メリンダというワケ有りの過去を持つ女性をヒロインとしたラブロマンスを、喜劇仕立てと悲劇仕立ての2本同時進行で見せる映画。イジョフォーは悲劇のヒロインが恋に落ちるプレイボーイのピアニスト役。

ウディ・アレン監督のロマンス・コメディ作品を観たのはしばらくぶり。好きな人は大好きなんだろうけど、相変わらずのノリだ。しばらくぶりに見たのであまり気にならなかったけれど、一時は登場人物が神経質にまくし立てるたびに、ウディ・アレンが演技指導している姿が思い浮かんでしまって、どうにも映画にのめり込めなかった。でも、お芝居としてみたら、これもよく練られたストーリー。そつがない。


で、これまで4本しか観ていないキウェテル・イジョフォーなのですが、色気と知性を兼ね備えた役がよく似合うし、演技もかなりうまいのではないかな。昔のアメリカのブラックムービーに出てきそうな、少し野暮ったいルックスもむしろ私的には好みなのだ。ハードボイルドな探偵役なんかを見てみたい。絶対にはまると思う。いっそうのこと007シリーズの新ジェームス・ボンドも彼で良かったのではないか。
8月終わり公開の「キンキーブーツ」も面白そう!

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