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2006年7月

2006年7月30日 (日)

ランキンの短編集

『貧者の晩餐会』イアン・ランキン著
(ハヤカワミステリ 2004年邦訳)

Photo リーバス警部が登場する7篇を含む、全21篇を収めた短編集。
著者が大ファンのローリング・ストーンズに捧げた短編もあり、本書のタイトルもストーンズのアルバム名から付けられている。

リーバス警部登場ものはつい贔屓心が働いて、面白く読めてしまうが、それ以外でピンと来ない話が幾つかあり、もう一度読み直した。結果・・・短編には短編の読み方があるようだ。一度目には見落とした落としどころも見えてきて、味わいが増す。言葉遊びが随所にあり、原書で読めたらまた印象が違うんだろう。
イアン・ランキンのファンとしては、ランキンが小説を書くようになった経緯を語る「序文」に興味津々。10代半ばに友達と組んだバンドで、歌の詞を書き始めたことが、文章を詩的に書くことを覚えたきっかけなんて、ランキンらしいわあ。

2006年7月28日 (金)

「また俺をスパイしていたのか?」

どうやら当分は文庫化されそうにないので単行本を古本で購入。ジョン・リーバス警部シリーズの14作目の本書と、最新の15作目はなぜかポケミスではなくて単行本での刊行なのだ。


『血に問えば』イアン・ランキン著
(早川書房 2004年邦訳)


Fi2621351_1e_2 クラーク部長刑事にしつこく付きまとい嫌がらせをしていた犯罪歴のある男が、自宅で焼け死ぬ。同じ夜、リーバス警部が両手に大火傷を負い、病院で手当を受けたことから、一部から密かに疑いの目を向けられる。一方、エジンバラ市郊外の街で、私立学校に男が押し入り銃を乱射。男子学生2名の命を奪い、1名を負傷させた後で、自らのこめかみを打ち抜き自殺した。男はかつて英国陸軍特殊部隊に所属していたため、同じ経歴をもつリーバス警部が、男の動機を調べるために駆り出される…。


1996年にスコットランドの小学校で実際に起きた児童・教師17名死亡の銃乱射事件をヒントに書かれた作品だそう。軍隊は人を殺す訓練をするだけで、民間人に戻る前にそれを白紙に戻す作業は何もやらない。銃乱射男の動機は、その後遺症として片付けようとする精神病院の医師に、元軍人のリーバスとしては頷くわけにはいかない。優秀なゆえに特殊任務班に選ばれ、過酷な洗脳に耐えられずノイローゼとなって除隊したリーバスだから、なおのこと。
本当の動機は、事件の真相は・・・
かなり後味が悪いものだった。
そして、衝撃的な結果なのに、ちっとも意外には思わなかった。現実の最近の日本で、同じような理解できない動機による事件がいっぱい起きているから、こういう結末もありだなと、悲しいことに途中で予想もついてしまう。


といっても、このシリーズが面白いことに変わりはない。今回はリーバス警部と、愛弟子ともいえるクラーク部長刑事がペアを組んで動く場面が多く、息の合ったやりとりが楽しい。しかし、親子ほども年が違う二人とはいえ、お互いのことをこれほど理解していて単なる同僚でいるのは難しくないだろうか?
二人とも大好きなキャラなのだが、性格が似すぎていて、その先の先が心配だ。このまま二人とも一匹狼的立場でいてほしいな。

2006年7月22日 (土)

ああ牧師様、馬鈴薯でそんなことを…

推理小説というよりは歴史冒険ファンタジー?

『ジョン・ランプリエールの辞書』ローレンス・ノーフォーク著
(創元推理文庫 2006年)


Fi2621349_1e_2 18世紀、ジャージー島。ジョンが想いを寄せる美しい子爵家令嬢の水浴姿を見てしまった父が、猟犬にズタズタに噛み殺される。それは、彼が直前に読んだギリシア神話の物語をなぞるかのような光景であった。神経症を疑う彼は、医師に療法として勧められた固有名詞辞書の執筆を始める。だが、またしてもギリシア神話をなぞる惨劇に遭遇することに…。
サマセット・モーム賞受賞作。


文庫裏表紙の内容紹介文をそのままコピーしてしまった。手抜き…。帯には「驚異の大バロック歴史小説」とか「エーコ+ピンチョン+ディケンズ+007」という、ご大層とも思える謳い文句が並んでる。とにかく分厚い本だ。饒舌な小説。邦訳が出たのは2000年で、その単行本値段が5250円ですよ!いったいどれだけの人が買って読んだんだろ? おまけに固有名詞がわんさか出てくる。読み終えるのにヒーヒー言ってしまった。


ジョン・ランプリエールという、18世紀後半に『古典籍固有名詞辞典』を執筆編集した実在の人物を主人公に仕立て、ギリシャ・ローマ神話から東インド会社の貿易、フランスのユグノー弾圧史、さらに……という歴史上の大事件までを題材に、ロンドンの地下に横たわる巨大な恐竜の化石やらSFチックな人造人間やらロボトミー手術らしきものまで登場させて、かなり強引な力わざで一つの物語に仕上げてある。
ど近眼のためにメガネをかけ、いつも何かにつまづいて転んでばかりのちょっと頼りない文学バカ青年のジョンと、子爵家令嬢ジュリエットの恋の行方が気になって、何とか最後まで読み終わったけど、せめて頻繁に引用されるギリシャ・ローマ神話の神々の名前は知っているくらいの基礎知識がないと、きついー。


あと、視点がくるくる変わる構成によって、文中の三人称が誰を指すか理解するまでに少し時間がかかったり。この点は、著者が未熟?と思えたりもしたのだが、膨大な歴史的知識をもとに、これだけ大風呂敷の、とりとめのない妄想のような話を一応は筋の通ったミステリーとして完結させる意欲、体力はすごいです。

2006年7月17日 (月)

中東のこと。

ブログはログインして書き始めるまでが面倒。
毎日あれこれ考えるけど、考えがまとまらないままに放ってしまう。

今はイスラエルに空爆されているレバノンのことが気になって
毎日ニュースをチェックしてる。
身近な北朝鮮のことよりそっちにより目が行くなんて、平和ボケもいいところだと
言われてしまいそうだが、レバノンは去年10月に旅したばかりなので、
自分なりに意見が言えそうな気がしてしまうのだ。
でも、実際にはここに書けるようなことは何も浮かんでこない。
レバノン知ってる、と言ってみても、しょせん旅行のための付け焼き刃知識だ。

日本でのニュース報道を見る限りでは、いつもどおり、軍事力を笠に着たイスラエルの
やってることのほうが一層酷いのではないかという印象は変わらない。
でも、イスラエル国民の中には、
他国の一般民まで巻き添えにする空爆攻撃をとても恥ずべきことと感じ、
こんなに憎まれる国にはいたくないと考える若者が少なくないというし、
キリスト教の信者が3割を超すレバノン国民には、
国内にいるイスラム教シーア派の武装組織こそ迷惑と考える人たちがいる。
イスラエル軍が、今日はついに北部のトリポリまで攻撃。
武器などの輸送経路まで、ことどとく空爆して絶とうという考えらしいが、
多宗教のレバノンが国単位で全面戦争に巻き込まれるというのは、
実際おかしな話だ。

シリアが絡んでくるのも時間の問題と言われているし、
誰か第三者が本格的に仲裁に乗り出さないと収束しない気がするが、
今、そんな影響力と意思を兼ね備えた人は世界にいるんだろうか?
エジプトとヨルダンあたりがイスラエルをなだめることができたら一番なんだろうけど、
ここまで大きくなってくると…。

2006年7月16日 (日)

ぶっとんでます。

嫌われ松子を観るつもりだったのだが、今さら前売りはどこももう売り切れていて、こっちに変更。
少しネタバレ。

「ローズ・イン・タイドランド」(2005年 イギリス/カナダ)
★★★★★

Fi2621347_1e 子供にここまで演じさせるとは、とんでもない映画だ!予告を観て想像していたより、はるかにダークなファンタジーだった。でも、好きです。あまりに無垢な少女の世界観に心揺さぶられる。テリー・ギリアム監督が、「不思議の国のアリス」をモチーフとしたミッチ・カリンの異色ファンタジー小説を映像化した作品。


ファンタジーといっても、ストーリーは孤独な少女ジェライザ=ローズの現実を描いている。自分の欲望のままに生きるドラッグ中毒の両親のもとで、学校にも通わずに育った少女を待ちかまえる運命は、普通の生活を送っている人間の目にはあまりに孤独で不幸に見えるが、そもそもこの少女の頭の中には「孤独」や「不幸」の概念がないのでは?と考えると、単に可哀想な子供の話と解釈するのは的はずれに思える。


草原にポツンとたたずむ壊れかけの一軒家に引っ越し、外界とは隔たった環境で、指にはめたバービー人形の首をお供に、冒険ごっこなどをしながら遊ぶローズには、自分の空想が世界のすべてだ。
そのローズの前にやがて現れる隣家の姉弟は、どこか変わっている。(少女とかかわる人間は、両親をはじめ一般常識から外れた人たちばかりだ。)普通の人間なら、恐怖や嫌悪感を覚えるような人物たちなのだが、自分の空想世界しか知らない少女は、その新しく出会った隣人たちもすんなりと自分の世界の住人として受け入れる。というか、新しい友達と会えたことがとっても嬉しそうなのだ。自分が創り上げたバービー人形の人格とは異なる他者、生身の人間との交流。
そのときのローズの笑い声ときたら、あまりに無邪気で楽しそうなので、心が洗われるような感覚にとらわれるとともに、孤独という現実も一層ひしひしと伝わってきて、痛いくらいなのだが、他人との交流が、少女の空想世界を崩壊させていくと思いきや、そうでもない。強いよこの子は。


少女の無垢な気持ちに揺るぎはなく、一般には恐ろしいこと、グロテスクなこともごく当たり前のことのように消化して、やがて危なっかしい恋のようなものまで「ままごと遊び」の延長のように楽しんでしまうのだ…。
いや、ままごとに見えることも、少女には現実か? 空想遊びと現実の境目は、大人だってはっきり自覚しているとは言い難い。これはこれで、一つのまっとうなラブストーリーであると思う。なので、ラストはホッとする部分でありながら、少し悲しくもなった。


ローズが生まれながらのジャンキーに見えるシーンもあったけど、これは監督のカラーだろうし、子供ってハイなときはとてつもなくハイだからね…。主人公のジェライザ=ローズを演じるジョデル・フェルランドが文句なくかわいい。ずっと出ずっぱりでセリフが多く、かつ難しい役どころだと思うのだけど、どういうふうに解釈して演じたのかな。天才子役なら、凡人の考えることなど軽く超越した解釈をしているんだろうけど。

被害届け出なし。

「インサイド・マン」(2006年 米)
★★★☆

(少しネタバレ)


Fi2621346_1e デンゼル・ワシントン、クライヴ・オーウェン、ジョディ・フォスターら出演。銀行強盗グループの手口の鮮やかさで見せるクライム・サスペンス。でも、印象に残るのは、オープニングとエンディングに使われている曲がなぜかインドのポップスだったり、脇役として登場するアルバニア人やシーク人といったNYにおけるマイノリティの存在だったり、非暴力性(誰も死なない)だったり。・・・映画を見終わった後で監督がスパイク・リーと知り、ああなるほどと思った。

そんな前知識もなく観に行ってるのか?と突っ込まれそうだけど、本当に知らなかった。で、映画を観ている間は、大筋はよく出来ているのに、テーマは欲張りすぎて散漫なままの、意欲的な新人監督による作品ではないかと想像を膨らませていたわけで…。
でもスパイク・リーなら納得だ。娯楽作品として面白いかつまらないかは別として、主張したいことはきっちり盛り込んでいる。言い方を変えれば、あのスパイク・リーの映画という前置きがあってこそ理解できる部分も多い作品という気がしなくもありませんが・・・。


銀行の隠し金庫、過去の戦争、ダイヤモンドとくると、少し前に読んだマイクル・コナリーの小説を思い出す。というか、実際にあの小説が脚本のヒントになっているのではないの?
正直、銀行強盗グループの完全犯罪の手口自体に大きな驚きはなかったが、
とぼけたユーモアを散りばめたストーリー自体は好み。基本はクスクス笑いながら観る映画ではないだろうか。もうちょっと会話がハードボイルドなタッチで洒落ていたらなと思うのだが、字幕を頼りに観たのでなんともいえない。
老若男女混合の犯罪グループのメンバーがどういう経緯で集まったのか興味深い。

2006年7月 2日 (日)

ごちゃ混ぜブラジリアンポップス

先週の水曜日、昔一緒にバンドをやっていた仲間に誘われて、代官山UNITに「Moreno-Domenico-Kassin+2」というブラジリアンポップスのユニットの演奏を聴きに行った。
いやー、W杯のブラジルが順調に勝ち進んでいて良かったよ! グループリーグで敗退したらブラジルからやって来たメンバーの心中はどうなのかと、チケットを入手した時点でそれが心配だった(ウソ)。


メンバーはモレーノ・ヴェローゾ、ドメニコ・ランセロッチ、アレシャンドリ・カシン、
ステファン・サンフアン、ペドロ・サーの5人で、それぞれが芸達者。友人も私も、モレーノがカエターノ・ヴェローゾの息子という知識しかなくて、「で、どの人がドメニコさんで、カシンさんなわけ?」というしょっぱなの疑問が最後まで判明せずに終わったライブだった…。モレーノだけは声質がお父さんに似ていたのですぐに分かった。

曲によって、ボーカルはもちろん、ベース、ギター、ドラムと楽器もチェンジして演奏。おそらく、曲を作った人がリードボーカルも取っていたと思うのだけど、メンバーの個性を反映して、演奏する曲調もバラエティに富み、肩に力が入っていない、とても自由な雰囲気のライブだった。私自身はユニットに名前が入っている3人よりも、ギターのペドロが気になった。ペドロ・サー・・・どこかで聞いた名前だと思って、後で調べたら去年のカエターノの公演に参加していたギタリストではありませんか! その時もすごく気になっていたのだ! 不思議な味のあるギターを弾く人。


ライブは最後のほうで日本人ミュージシャン3人(小山田圭吾ら)が飛び入り参加。でも、もうこの時点では、私と友人のオバさん2人組は、人混みにこれ以上耐えられないと、バーカウンターのほうに移動し、モニターテレビを眺めながら聴いていたのだった。
ライブでスタンディングはちっとも気にならないが、ちょっとでも身動きすると人と接触したり、さらに前の人たちの頭でステージ上が見えない状況というのはもう限界。ほとほと限界…。


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