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2006年5月13日 (土)

クラック登場前夜。

巷では“ワシントン・サーガ”と呼ばれているらしい全4作からなるハードボイルド+ノワール小説シリーズ。これはその3作目で、前作の『愚か者の誇り』からちょうど10年後、1986年のワシントンDCが舞台。

『明日への契り』ジョージ・ P・ペレケーノス著
(ハヤカワ文庫 1999年訳)


Fi2554234_0e 前作で麻薬の売人から足を洗ったディミトリ・カラスは、親友マーカス・クレイの右腕としてレコードチェーン店の経営を手伝っている。今回はそのマーカスが物語の中心人物。ある日、新たにオープンした店の前で、コカイン密売組織の一員が乗る車が炎上する事故が起き、その車から大金が盗まれるのを一人の少年が目撃。犯罪に巻き込まれるのは二度とゴメンだと思っていたマーカスだが、その少年を守るためにとった行動で、組織から目をつけられてしまう…。


時代が新しくなるに連れて、ワシントンの街のワルたちも低年齢化。今回は10代の子供たちが麻薬や銃による犯罪に手を染めたり、巻き込まれそうになったり。
シリーズ3作目ともなると、作家の持ち味がよく分かってきます。ペレケーノスの小説は犯罪を描いても、どこか青春小説に近い味わいがあり、ミステリ文庫に収められているけど、普通に小説として楽しめる。
主な登場人物それぞれが、善人部分と悪人部分の割合にほぼ応じた結末を迎えたのは予想どおりの展開。とはいえ、子供がかかわってくる話なので、親のような気持ちで始終ハラハラしながら読みました。

唯一、前作の主人公であるディミトリが、中年になっても大人になり切れたとはいえず、コカイン中毒のまま、大した活躍もなしに終わるというのは予想外だったけれども、こういうところに作家の美学らしきものが出るのだろうと思います。
ペレケーノスは、16歳のときに銃の暴発で友人に取り返しのつかない怪我を負わしてしまった過去があるという。ディミトリの自虐的(?)キャラクターには、作家自身のいまだ消えない罪の意識が反映されているのかもしれない。人間くさいといえば誉め言葉になってしまうが、ホント冴えない。いいところなし。このまま本物のダメ人間で終わってしまうのか? 次作が気になるところです。


期待していた通り、今回も音楽ネタがいっぱい!
80年代のワシントンDCといえば“ワシントン・ゴーゴー”なわけで、早々にチャック・ブラウン&ソウル・サーチャーズのライブの場面が登場! 同じ夜に、市内の別の会場ではエコー&ザ・バニーメン、パンクメタルバンドのスクリームがそれぞれライブをやっており、大人が集うクラブではギル・スコット・ヘロンが出演中……といった具合。
あと、マーカスが熱狂的ファンであるNCAAバスケットボール・トーナメントの話題も多い。プロバスケすら何の知識も持たない私は、小説のラストにポカーンとなってしまったが、巻末の「訳者あとがき」に助けられました。


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