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2006年5月 7日 (日)

“アフロヘアで黒人歩き”に憧れた時代

『愚か者の誇り』ジョージ・P・ペレケーノス著
(ハヤカワ文庫 1999年訳)


Fi2537941_0e ワシントンDCを舞台としたギリシャ系アメリカ人ピート・カラスが主人公のハードボイルド小説『俺たちの日』。これはその続編といえる作品で、ピートに代わって、息子のディミトリ・カラスが主人公。時代は1976年に飛ぶが、ディミトリも麻薬の売人という、亡き父親と同じようなふらふらした生活を送っている。

あらすじは、ディミトリと、アフリカ系アメリカ人でレコード店を営んでいる親友のマーカス・クレイが、快楽的に人を殺すことも厭わぬ前科者のグループと麻薬取り引きの場で、行きがかり上のいざこざを起こし、命をねらわれるようになるというもの。アウトローな男たちの物語で、クライマックスの対決シーンも読ませるのだが、ペレケーノスの小説は前作もこの作品も、家族や友人同士のなにげないやりとりを描いたシーンがとてもいいです。登場する人物ほぼすべて、どんな愚か者にも、愛する家族や信頼する友人がいることを、温かい視線でもってさりげなく描いていて救いがある。


繰り返しになるけど、舞台は1970年代半ばのチョコレート・シティ! この小説の魅力はもう一つ。ブラック・パワーの余韻残る1970年代のアメリカ若者文化を、当時の音楽、映画、テレビドラマ、バスケットボールの選手など具体名をてんこ盛りに用いて描いているところ! 特に当時のソウルやロックが好きな人にはたまらないです! 
小説の扉からカーティス・メイフィールドの「バック・トゥ・ザ・ワールド」からの詞の引用。なにせ準主人公であるマーカスはレコード店のオーナー。その店には、オーナーがジミヘンのレコードをロックコーナーH棚のハートハンブル・パイの間に置いても、必ずソウルコーナーに移してしまう若い黒人店員がいて、いつもどおり2人で揉めているところへ出社してきたもう一人の店員が、興奮気味に昨日見た7時間に及ぶPファンク一派のコンサートについて話し出したりする。これではまるで、ニック・ホーンビィ著『ハイ・フィデリティ』のハードボイルド版?

一方で主人公のディミトリは、女性と部屋でキャプテン・ビーフハートを聴いたりするマニアックなロック好きなんです。愛車カルマンギアでドライブ中、「モット・ザ・フープルなんぞは聴きたくない、何かずっしりくるやつを頼むよ」とのマーカスの要望に応え、ロビン・トロワー(懐かしい)のカセットテープをかけたり。
シャイ・ライツをチー・ライツと訳すなど、何カ所か一般的な邦名との違いが気になったけど、誤訳というわけではないからね…。あと、例えば「……だがこのテープでは、カーティスのヴォーカルが別の黒人シンガーの声におき換えられ、エディ・リヴァート風に延々とリズムが刻まれていた。……」という文は「エディ・リヴァート風の黒人シンガー」と訳すのが正しいと思うけど。


原題は「King Sukerman」。小説に登場する不良少年たちがこぞって関心を寄せる架空のブラックムービーのタイトルが「キング・サッカーマン」で、小説の中で描かれる映画の内容が、小説の最終章あたりで大きな余韻を残す効果を発揮するわけだけど、邦題を『愚か者の誇り』としてしまうと、なんだか違和感があります。


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