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2006年5月14日 (日)

懺悔

Fi2555175_0e もう四半世紀も前になるが、都内のあるジャズ喫茶でバイトをしていた。店の名前はそれほど有名ではなかったが、レコード枚数は都内一。東北のどこかの市にはそれを上回るレコードを置いてある店があって、全国では2番目か3番目、みたいな噂もあった。学校を卒業した時点でいったんバイトをやめたが、しばらくしたら、臨時でいいから手伝ってほしいと頼まれて、結局足かけ5年くらい通った。


オーナーは深夜の閉店間際にならないと顔を出さないので、勤務中はバイト2人、または1人でコーヒー煎れたり、レコードかけたり、レジ打ったり、トイレ掃除をしたり…。バイトを始めた頃は、まだジャズ喫茶も休日には開店間もない時間から満席になるほど客が入っていたので、トイレに行くひまが見つけられず、膀胱炎になったバイト仲間もいた。

時給は450円前後。当時のジャズ喫茶のコーヒー1杯の値段と同じ。でも、客のいない時間は、まだ聴いたことのないレコードをとっかえひっかえかけて聴く楽しみがあったし、客からのリクエストがないときは、DJ気取りでかけるレコードの順番を考えるのが楽しかった。

しかし、そんな好き放題をしていると、小生意気な私の本性が表れるまでには、それほど時間はかからなかった。バイトを初めた当初、やたらリクエストが多かったのが、キース・ジャレットの『ザ・ケルン・コンサート』だった。すでに新譜でもないのに、休日には3回も4回もリクエストが入る。リクエストするのは、大抵は初めて店に来るような客だ。そのうち「もううんざり! こんなナヨナヨしたソロピアノばかりかけていられるかよ!」と思い始め、日に日に「キース・ジャレット憎し」になっていった。
まずは『ケルン』のリクエストが来たら、一応レコードはかけるが、直後にのっけから思いっきりうるさいフリージャズのレコードをかける。そうすると『ケルン』をリクエストした客は、即座に席を立って帰っていく。やがてリクエスト自体も「先ほどかかったばかりですから」とウソをついて断ってみたり。そうして何人の客をがっかりさせたことか…。


今考えると、本当に申し訳ないことをした。その店はパラゴン・スピーカーを置いていた店で、遠方からわざわざパラゴンでのキース・ジャレットを聴きたくて訪れていた人もいたはずなのだ。そんな思いに当時の私はまったく無神経だった。
キース嫌いの呪縛を解いてくれたのは、83年に発売された『スタンダーズVol.1』(写真)。これを聴いて初めてキース・ジャレットもいいなと感じることができた。


5年も働いたジャズ喫茶なので、たくさんの思い出がある。おしゃべり禁止の店で、客と会話することもほとんどなかったが、ジョン・コルトレーンの『ヴィレッジヴァンガード・アゲイン』B面をリクエストする日は、なぜかズボンとパンツを脱いで露出狂に変身してしまうオヤジや、ヌイグルミを抱えてやってくる男子学生など、一風変わった常連客もいて、忘れがたい。何より忘れがたいのは、若気の至り丸出しだった自分なのだけれども…。

バイトを辞める頃には、客数は大幅に減っていた。他の硬派なジャズ喫茶もどんどん姿を消していった時代なので、私のせいではない。ついに店を閉めるとの知らせをもらったときは、客として出掛けていき、店の名前の入ったコーヒーカップとマッチを記念にもらって帰ってきた。2年前の引っ越しのときには、まだ手元にあったのに、いま必死で探しても見つからない。あのとき捨てちゃったのか…。


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コメント

”ケルン・コンサート”が流行ってたころ、ぼくもキースが聴く気になれなかった。今はジャズはキース・ジャレットのトリオしか聴かない!(ぼくはビートルズ以前にコルトレーンを聴いていた)ぼくは昔ジャズ喫茶に行く方だった。といっても新宿DIG,DUG、早稲田MOZZ,吉祥寺アウトバック、渋谷のブラックホーク(だっけ?)くらい。ひめひかげさんがいたのはどこか?ぼくはDIGのビュッフェのマッチは持ってるかもしれない。最近また、たまにDUGと吉祥寺メグに行く。

肝心なこと書き忘れた。この”スタンダーズVol.1”の1曲目、”Meaning Of The Blues”がとても好き。アルバムでは”Still Live”が好きさ。

>warmgunさん共通の話題がありましたね!『Still Live』は聴いたことがないです。調べたらちょっと値段高いけど、聴いてみたい曲が何曲か・・・そそられます。ビートルズ以前というとジャズもまだまだ勢いがあったんでしょうね。私がバイトしていた店は中野にあったのですが、一部の常連さんにも意地悪い対応をしていたので、恥ずかしくて店名まで書けません(笑)。

つづき。最初に行ったジャズ喫茶は新宿のDIGでした!一人で行って一番前の席に座り(そこしか空いていなく)、未成年でビール頼んで、気が付いたら机の上に突っ伏して寝ていました。あれもとても恥ずかしかった。吉祥寺のアウトバックは私が行き始めた頃はフージョン喫茶になってましたよ。吉祥寺だとAFによく行きましたよ。あと渋谷はジニアス、四谷のいーぐる、新宿のポニーとかんー、いっぱい思い出してきました。やっぱりいいですね、ジャズ喫茶。平日の昼間とか行ってみたい・・。

中野か!ぼくは学生~新婚時代、阿佐ヶ谷周辺に生息していたんだが、中野はあまり行かなかった。なんかすごくきたないクラシック喫茶あったね。でも当然、ヒメヒカゲさんとは時代がずれてるー。アウトバックのとなりに”赤毛とそばかす”とやらもあったよ(ロック)DIGはなつかし。”Still Live”買って損しないと思う。Disc1の1から2へとDisc2の3曲目のExtensionよいよ。でもあまり”エロ・ボイス”じゃないか!最近のジャズ喫茶は客層も普通で、なんか散漫だが、たまにはいいよ。

>warmgunさん中野のクラシック喫茶、1度だけいきました。マヨネーズのキャップをミルク入れにしてる店でしたよね。いまもあるかな?キース・ジャレットはうーうー唸ってますけど、ピアノは独特のエロ音色ですからね!話は違いますが、なぜかwarmgunさんとは男性の趣味が一致!それってどうなんでしょうか・・(笑)なかでもジャン・ルイ・トランティニャン好きです。

それってどうなんだろう!(笑)趣味がいいんじゃないだろうか。SMAPも嫌いだし!好きな女性はどう?マギー・チャンとジュリー・デルピーは!ぼくは歌手は男ばっかが好きなんだ。昔ある女性からそれを指摘され、”おれはホモ素質か?”と悩んだ。最近グレイス・ジョーンズの声が好きなんだが、この人スーパー・セックスよね。このところ香港系の自殺したレスリー・チャンやトニー・レオンが好きさ。背がちっこいのに共感してるのかな。日本人は(見てないんだが)松田優作以来、男も女もだめね。

私もマギー・チャンはかなり好きです。トニー・レオンも。映画「2046」のほうはまだ見てないんですよ。そのうち借りなければ!あと好きな女優は、けっこういろいろいまして、今はファニー・アルダン、ダンアン・ウィースト、キム・ベイジンガーなどが好きなのですが、あまり統一性ありませんね。品があってゴージャスで、精神的にタフに見える(男勝りとも)人に憧れます。役では「グロリア」のジーナ・ローランズが最高です。ボーカルは私も男性が多いのですが、異性だからというのではなく、男性のほうが声のレンジの幅が広くて、聴いていて飽きないのではないかと思うのですがどうでしょう。でも、世の中にはもっぱら女性ボーカルが好きな人もいますからね。

引き続きwarmgunさんへ。グレース・ジョーンズはもはや懐かしい域ですが、いいですか?アルバムを通して聴いたことがないもので。話がとっちらかっていますけど、日本の俳優、今だったら個人的に北村一輝がイチオシなんですけど、これは女の目を通しての好みも多分に入っているかもしれないので(笑)。最近の俳優さんは最初は良いと思っても、ドラマに出続けていると、アクのない、無害な感じになってしまってつまらないかもしれません。

このコメント欄、独占状態でやや恥ずかしいが、べつにタダだし続けよう(きみが飽きないならばだ)ぼくの方は自分のブログ書くより楽しい。えっと、女優ね。ダイアン・ウィーストって認識してない(最近の映画ほとんど見てない)あとのふたりも明瞭でない、なんか口が大きそうだ。「グロリア」のジーナ・ローランズ!もち最高。これそう思わなきゃ、映画見る資格ないよね。北村一輝!認識してない(最近テレビドラマ見てない)あなたのブログで名前みて気になり、一度見ようと思ったがみてない。

(下記コメント字数オーバーなため、さらに)グレイス・ジョーンズ。80年代の人。当時LPを3枚持っていて、ある時期LPをひとに皆あげてしまった。CDで買いなおしたのはベスト盤。もともと”リバー・タンゴ”が好きだったのが、最近”プライベート・ライフ”と”ウォーキン・イン・ザ・レイン”を発見。このごろは気に入った曲あると、その曲ばかりバカのようにリピートする。このひと、それこそ”声のレインジが広い”というか、異常なんね。歌がうまいひとじゃないよね、語りね。あなた黒人系ボーカルよく聴いてるから、いくらでもうまい人はいると思うが、ぼくはほとんど聴いてない。だからこういうジャマイカのひととか(たまに聴くと)やっぱ隔絶した感じするね。ぼくが白人ロック・ボーカル好きなのは、下手なのがすきだったんだが。まあ全然黒人的でないマーク・ボランとかも好きさ。

>warmgunさん独占というか、デュオでアドリブ展開している状態?おかげさまで、有意義なコメント欄になっています。コメント欄も公開はされているけど、おそらく当事者しか見てないのではないかと考えると、ちょっとしたスリルがありますね。ブログ本文よりも本音が出やすいし、ジャムセッション的な面白さ!warmgunさんのところは、うちより訪問者も多いようなので、コメントを書くの、つい躊躇してしまうんですけど(笑)。

つづき。グレイス・ジョーンズは「スレイブ・トゥ・ザ・リズム」というヒット曲や「ラヴィアン・ローズ」をカバーして歌ってたのは知っています。今だったらクラブ・ミュージックという分野になるんでしょうけど、スタンスとしてはロックの人という印象です。私も一応はロック育ちですので、ロックボーカルはあまり上手くないほうがいいというのはよく分かります!いわゆるヘタウマの精神は、ロック的ですよね。マーク・ボランの良さは、純粋だった(?)10代の頃は分からなくて、でも20代になったらカッコイイと思えるようになったかな…。

まだまだいくぜ!あなたがあげているグレイス・ジョーンズの2曲はよくない!最初のシャンソン・レゲエ?の頃では”パ”という曲がよかったんだが、ベスト盤にはいってない。”スレイブ…”はつくりすぎだ。即興もジャム・セッションもよいね。”スリル”!ぼくのブログのアクセス数は同じ人が日に数度来てると思う。見てんのは100人以下よ。遠慮なくコメントください(でも話題がわだいだからねぇー)ロック・ボーカルでもポール・ロジャースやロッド・スチュワートはやっぱうまいと思うよ。FREEのころのポールとか昔のロッドは色っぽいよ(ただエロ・ヴォイス的余裕がないんだが)明日から旅行に行くのでまたね!

>warmgunさん世の中に知られているその2曲はあきませんか・・。ラジオじゃ大抵いつもこれしかかからないもので。ポール・ロジャースやロッド・スチュワートはもろにRBシンガーリスペクトな感じがしますね。今ではポールはクイーンと一緒に、ロッドはスタンダード歌いかな?OKをいただいたので、そのうちまたブログにお邪魔しますー。

こんばんは。このCD、いやレコードだったか、Vol.2とともに、香港のクーロン、ネイザンロードのレコード店で買いましたよ。もう20年以上前の話。当時、日本で輸入盤が2000円くらいだった時代、香港では少し古いものなら800円ぐらいで買えて、CDも日本なら3500円くらいしたものが200円くらいだったかなぁ。安い安いとたくさん買って帰ったもので、日本の空港で、ポルノの雑誌にでも思われたのでしょうか、チェックされました。昔のことは、よく覚えています。^^

>キウイさんお久しぶりです。CDなら200円って、正規ものとは思えない値段ですね(笑)。最近はいろんな名盤が格安シリーズで再発されていて、ネットで思わず注文しそうになり、ぐっとこらえてます。空港チェックは経験ありませんが、緊張するものなんでしょうね。

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