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2006年3月26日 (日)

硫酸ベイビー。

『サイレント・ジョー』T・ジェファーソン・パーカー著
(ハヤカワ文庫 2002年邦訳)

Fi2424358_0e 赤ん坊のとき、父親から硫酸をかけられ顔に大火傷を負ったジョーは、施設にいるところを政界の実力者ウィル夫妻に引き取られる。それから約20年後、大人になったジョーは保安官補として働きながら、養父ウィルのボディガードのような役目も務めている。しかし、知り合いの娘の誘拐事件で、ウィルがその身代金受け渡しの役目を買って出て、娘を保護した直後、ウィルはジョーの目の前でギャングらしき一団に射殺されてしまう…。


2002年のアメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長編賞受賞作。さらに週間文春ミステリーベスト10では第1位、このミスでは第2位。だけど、そんなに面白いかな、これ。“硫酸ベイビー”と呼ばれる主人公ジョーの心境が丁寧に描かれている点が評価されたんだろうか。

もの静かで、言葉遣いも極めて紳士的なジョー。しかし、その人間的魅力はいまいち伝わってこない。もっと人間臭さを露わにしたほうが、読者受けはいいのではないか。まるで図体だけは大きい無垢な子供みたい。物語の核になっている事件、すなわち心から信頼し尊敬していた養父が殺されたことによるジョーの悲しみ、犯人に対する憎しみと、幼少の頃から引きずっているジョー自身のトラウマが、うまく絡まっていない気もする。
そもそも顔半分に醜い傷跡がある必要性はあるのかな? 惚れた女性も、高価な贈り物攻撃だけであっさり落ちてしまうんだからさ。…これを言ってしまうと元も子もないわね。続編があれば、主人公ジョーの外見上の個性ももっと生きてくるかもしれない。
事件解決もなんだかあっさりしてた。政界などの実力者が何人も関わってくる事件なのだから、捜査チーム内部にも真相究明を妨害する人がいるとか、頭の固い人がいるとか、もっと障害がないとつまんない。推理ものとして読むとかなり物足りない。唯一、ラストのほうで思いがけず明らかになるジョーの出生の秘密が余韻として残った。これも途中でうすうす気付いてしまうんだけどね。

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コメント

私結構この淡々とした物語の進行にはまりました。でも、この人の処女作「ラグナ・ヒート」はめちゃつまんなかったです。それに比べれば・・・。

>Djangoさんミステリーとしてはあまりに単純だったので、がっかりきました。読んでいる途中は、うん、悪くはなかったです。文庫の解説に、作者はこの作品で化けたと書いてありましたね。

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